著書一部
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私の執筆の想いについては、著書「いまのあなたで大丈夫!全盲ママが伝える繋がる子育ての魅力」の「あとがき」に掲載しています。このページではその内容を全文公開しています。
あとがき(全文掲載)
「梓さんにとって障害は、一つの個性なんですか?」
時折、こんなことを聞かれます。そのたびに、私ははっきりとお伝えしています。
「障害は私の個性ではありません」と。
見えないことは私の個性だと、周囲に言っていた頃もありました。少しでも障害をポジティブに意味づけしたいという気持ちがあったからです。
その考え方も、大学に進学してから大きく変わりました。目が見えないのが当たり前の盲学校とは違い、大学は見える人ばかり。そこで突きつけられたのは、どこまでいっても「障害は障害」という動かしがたい事実でした。
紙に書かれた文字の読み書き、車の運転、町中の表示を見ながらのスムーズな移動など、どう頑張っても見えない私にはできません。〝絶対にできない〟のです。
「そんなの、見える私にだってできないよ。車に乗れないし、方向音痴だし」と言う人もいるかもしれません。
〝やればできるかもしれない〟ことと〝どうしてもできない〟ことの間には、決定的な差があるのです。
私は、〝絶対にできない〟部分を『障害』と捉えています。厳しい言い方かも知れませんが、『個性』という聞こえのいい言葉へのすり替えは、〝絶対にできない部分〟からの逃避にほかなりません。
「個性だからできなくてもしかたないよね」
こんなふうに思われては困るのです。
障害を『個性』と受け止められてしまえば、努力の入り込む余地が完全になくなってしまうからです。
私は、見えなくてもどうすればできるのかを考えて生きてきました。それが私にとっての障害との付き合い方です。障害によって生じた問題を「どのように工夫していくか」。そこにこそ、真の『個性』があります。
もちろん、私一人の力だけで全てうまくやって来られたわけではありません。困ったとき、たくさんの仲間が「どうすればできるか」を一緒に考えて、一人では思いつかなかった方法で知恵を絞ってくれました。問題を解決するのに、障害の有無は一切関係ありません。
私が「視覚障害者の代表」などとは決して思わないでください。見え方、見えなくなった時期、これまで歩んできた人生、人それぞれのストーリーがあります。
「視覚障害者」という人はどこにも存在しないことを、心に留めておいていただけると嬉しいです。
こういった想いから、「見える世界」と「見えない世界」をつなぎ、人とのつながりやお互いへの思いやりの大切さを伝えています。
2020年9月
東京都江戸川区の自宅にて
これまでの活動と、今後についての思いは、下のnoteに掲載しています。
「決めつけのない、工夫を認め合える社会を目指して」ホームページ開設に寄せて|西田梓|note